はじめに
こんにちは、今回はポータルとDXPの違いについてお話します。
Liferay製品もそうですが、かつて「ポータル」として知られていた製品が、現在では「DXP(Digital Experience Platform)」と呼ばれるようになりました。ついつい名前が変わっただけですと説明したくなってしまうのですが、この変化は単なる名称変更ではなく技術の変化や市場のニーズを反映したものだと考えます。しかし、「ポータルとDXPは実質的に同じではないか?」という疑問を持つ方は少なくありません。本記事では、Liferayを中心に、ポータルとDXPの違いを解説していきます。
ポータルとは?DXPとは?
ポータルとは、情報やサービスを集約してユーザーに提供する「情報の玄関口」です。一方でDXPとは、ポータルの進化形であり、「デジタル体験」を統合的に管理・提供するプラットフォームです。個々のユーザーに最適化されたユーザーエクスペリエンスを提供するという点に力を入れています。DXPは、顧客体験(CX)や従業員体験(EX)の向上を目的とし、マーケティングやeコマースなど広範な用途に対応します。
DXPという言葉の発祥
DXP(Digital Experience Platform)という言葉は、リサーチ会社であるGartnerによって提唱されました。Gartnerは、デジタル体験を提供するための技術プラットフォームの進化を捉え、従来のCMS(Content Management System)やWMS(Web Management System)の枠を超えた統合的なソリューションを定義するためにこの用語を導入しました。「Magic Quadrant for Digital Experience Platforms」というレポートを発表し、DXP市場の範囲や進化を定義しました。このレポートでは、DXPが単なるウェブサイト管理を超え、顧客体験(CX)や従業員体験(EX)を統合的に管理するプラットフォームとしての役割を果たすことを説明しています。
Liferayの歴史
次にLiferayの歴史に合わせてポータルからDXPへの変化を説明します。
2000年-2004年:ポータル前期 | 2000年にLiferay オープンソース ポータルがリリースされました。2004年にはLiferay Inc.が設立されました |
2010年-2012年:ポータル後期 | CMS機能(コンテンツ管理機能)が拡張された Liferay Portal 6.0〜 6.2 がリリースされました |
2016年-2018年:DXP前期 | Liferay DXP 7.0 がリリースされ、その後 Commerce、DXP Cloud、Analytics Cloud がリリースされました |
2019年-2025年:DXP後期 | Liferay DXP 7.2、7.3、7.4 の継続的な革新とPaaS / SaaS製品のリリースが行われています |
ポータルからDXPへの進化
ポータルがDXPへと進化した背景には、以下の要因があります:
- 市場の変化
かつてのポータル市場は、情報提供や基本的な操作性に重点を置いていました。しかし、顧客体験の重要性が増すにつれ、より高度なパーソナライズや統合性が求められるようになりました。これにより、Gartnerの市場分類も「ポータル」から「DXP」へと移行しました。 - 技術の進化
APIやクラウド技術の普及により、DXPは柔軟性と拡張性を備えたプラットフォームへと「進化」したとも言えます。AIやデータ分析ツールの統合により、リアルタイムでのインサイト提供が可能になりました。 - ユーザーの期待
近年のユーザーは、単なる情報提供ではなく、シームレスでパーソナライズされた体験を求めています。データや情報が増え、システム内に保持されていても、その情報に簡単にアクセスができないと意味がないと考えるユーザーが増えました。
Liferay DXPの事例
Liferayは、かつて「Liferay Portal」として知られていましたが、現在では「Liferay DXP」としてサービスが提供されています。以下のような進化が見られます:
- 統合性:単なるリンク集ではなく、ERPやCRMなどの社内の基幹システムとスムーズに連携。
- パーソナライズ:ユーザー属性だけではなく、ユーザーの行動データを活用し、個々の顧客に最適なエクスペリエンスを提供。
- 柔軟性:部品化されたアーキテクチャにより、必要な機能を柔軟に追加・変更することが可能。
また、Liferay DXPは、Adobe Experience ManagerやSitecoreなどの競合製品と比較して、カスタマイズの柔軟性やコスト効率の高さが評価されています。
ポータルとDXPの違いのまとめ
特徴 | ポータル | DXP |
---|---|---|
目的 | 情報提供やリンク集などが中心 | 統合的なデジタルエクスペリエンスの提供 |
機能 | シンプルな情報集約とリンク提供 | コンテンツ管理、パーソナライズ、データ統合 |
適用範囲 | 社内ポータル、カスタマーポータル | ポータルにプラスしてマーケティング、eコマース、CX向上等 |
技術 | レガシー技術が多い | API、AI、クラウド技術を活用 |
結論
ポータルとDXPは、単に名前が変わっただけではなく、技術的進化や市場のニーズの変化を反映したものです。DXPでは、単なる情報提供を超え、顧客体験を向上させるための統合プラットフォームとして進化してきました。近年、顧客のデジタル体験に対する期待は大きく変化しています。企業はよりパーソナライズされた体験や、複数チャネルを横断したシームレスなサービスを求めるようになりました。このような新しい顧客ニーズに答えるためにDXPが生まれ、今では多くの企業が導入を進めています。
