先日、Arun Subramaniyan が出演したTechstrong TVのインタビュー動画が公開されました。
動画では、Enterprise AIが次のフェーズへ進むために重要となる「Domain-Specific Language(DSL)」について語られています。
単なるチャットAIではなく、実際に企業業務を実行するAI Agentを作るには何が必要なのか。製造業・通信・金融などの実業務でAIを動かすために必要な考え方が非常に分かりやすく説明されていました。
動画はこちら:
Techstrong TV Interview
1. 「AI Chat」から「AI Execution」へ
動画冒頭でArun氏は、現在のAI市場はまだ「チャット中心」であると説明しています。
現在の多くのAIは:
- 質問に答える
- 文書を要約する
- 会話をする
という用途が中心です。
しかし企業が本当に求めているのは、
- システムを横断して動く
- 業務に必要な判断する
- 実際の業務を実行する
AI Agentだと述べています。
つまり、AIは単なる“会話相手”ではなく、“業務実行主体”へ進化していくという考え方です。
日本市場でも、生成AIのPoCは急速に増えていますが、「チャットできるだけ」では本番導入に繋がらないケースが増えてきています。
特に大企業では、
- 既存業務への組み込み
- 社内システムとの連携
- 実際の運用改善
まで求められるケースが多く、Agentic AIへの関心が高まっているように感じます。
2. なぜDSL(Domain-Specific Language)が必要なのか
この動画の中心テーマです。
Arun氏は、AI Agentが業務を実行するには「業界専用の言語」を理解する必要があると説明しています。
例えば製造業では:
- 設備ID
- アラームコード
- センサー値
- 工程番号
- 保守フロー
などがあります。
通信業界では:
- ネットワークイベント
- 障害コード
- トポロジー
- パラメータ
などの理解が必要になります。
つまりAIは、自然言語だけでなく「現場特有の言語体系」を理解する必要があるという話です。
動画では、この業界専用知識体系をDSL(Domain-Specific Language)という言葉で説明しています。
自然言語だけではなく現場特有の言語を理解するというところが重要なポイントです。
日本企業では特に、
- 独自略語
- 社内コード体系
- Excelベース運用
- 長年積み上がった業務ルール
が非常に多く存在します。
そのため、汎用AIをそのまま導入するだけでは十分な成果が出ないケースも多く、業界知識や企業固有知識をどうAIに理解させるかが重要になりそうです。
3. 「大きいモデル」より「正しい知識」
動画の中でArun氏は、AI業界が「モデルサイズ競争」に偏りすぎているとも説明しています。
しかしEnterprise AIで本当に重要なのは:
- モデルが巨大かどうか
ではなく、 - 正しい知識を持っているか
だと述べています。
企業では、
- 間違った回答
- ハルシネーション
- 説明できない推論
が大きな問題になります。
そのため、業界知識や企業知識を正しく扱えることが重要になるという説明です。
日本企業では特に、
- 精度
- 説明責任
- 再現性
が非常に重視されます。
そのため、「より巨大なLLM」よりも、「適切な業界知識を持つAI」の方が実運用に向くケースは多いかもしれません。
また一点補足すると、Articul8では巨大なLLMが使えないわけではありません。これらのLLMと連携しながら、LLMから持ってきた情報とArticul8で持っている知識を融合させてユーザーが必要な情報を生成することも可能です。
4. AI Agentは「システム理解」が必要
動画では、今後のAI Agentは複数システムを横断すると説明されています。
例えば:
- ERP
- CRM
- 製造装置
- ネットワーク監視
- データベース
などです。
つまりAI Agentは、
「文章を読むAI」
ではなく、
「Enterprise Systemを理解して動くAI」
になる必要があるという主張です。
そしてその接続部分としてDSLが重要になると説明されています。
日本企業では、新規システムをゼロから作るよりも、既存システムとどう共存・統合するかが非常に重要になります。
その意味では、
- Integration
- API
- Workflow
- Portal
の重要性は今後さらに高まっていきそうです。
5. Enterprise AIでは“Trust”が重要
Arun氏は、Consumer AIとEnterprise AIの違いとして、
- Security
- Governance
- Accuracy
- Explainability
を挙げています。
企業では:
「だいたい合っている」
では不十分であり、
「なぜその結論になったのか」
まで重要になるという説明です。
そのため、Domain Knowledgeを持つAI Agentが必要だという話につながっています。
日本市場では特に、
- 誰が責任を持つのか
- なぜその結果になったのか
- 監査できるのか
が重視される傾向があります。
完全自律型AIよりも、Human-in-the-loop型の業務支援AIの方が導入しやすいケースも多そうです。
まとめ
今回の動画でArun氏が一貫して説明していたのは、
Enterprise AIの本質は「汎用知能」ではなく「業界理解」である
という点でした。
AI Agent時代には、
- 業界知識
- システム理解
- DSL
- オーケストレーション
が重要になっていくという考え方が非常に分かりやすく整理されていました。
Enterprise AIが「チャット」から「実業務」へ進んでいく中で、今後ますます重要になるテーマだと感じます。

